2022年 エントリー作品

特別賞

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

持ち家リノベーション・リフォーム

耐震+断熱

3,000〜4,000万円

2021年12月

  • 断熱

    等級5

  • 耐震

    上部構造評点1.03

「ああ、これは絶対に新築の方がいい」
リフォーム計画の為に訪問した洋二郎はそう思っていた。
なぜなら、現場は傾斜地に佇む築44年の空き家。
地滑り地域にも認定されている土地で耐震性の不安も大きく、
安全なリフォームを行えるかどうかは定かでは無いと思ったから。

しかし、N様の思いは違った。
「N様は幼少期からおばあちゃんに育てられてきた。
ここは、そのおばあちゃんとの想い出が沢山詰まったお宅であり、
壊して新築ということは考えられない。東京に出て開業して、
いつかはリフォームをしてUターンで返ってくることを決意して、
早10年が過ぎていた。」

開業した商売は順調であり生活的にも余裕もあった為、
十分に建替えをおこなえる財政力はあった。
しかし、N様の気持ちの中ではリフォ―ムをして住みたい。
この選択一択だった。

N様の切実な想いを聞き、洋二郎は決心した。
「今までの経験上99.9%新築した方がいい。
でも、0.1%でも可能性があるのであれば、最大限の努力をしてから考えよう。」

そこから、リフォーム計画はスタートしたが、決して平坦なものでは無かった。
先ずは、土地の安全性を確保する為に地盤や擁壁調査を実施。
その上で、将来にわたり、安全に暮らせるような建物の軽量化と耐震補強を計画。
その後も何度も調査、打合せを繰り返した。

時には、N様の計画に対して、上司から指摘されることもあった。
「リフォ―ムだとコストと内容が伴わないのでは?早く、新築をしてもらうように説得した方がいい。」

洋二郎はこう答えた。
「それは一般論であり、N様が本当に求めているものでは無い。
N様があの家をリフォームして住みたいと仰っている以上、我々はその想いに応えるだけです。」
と、N様に最適なリフォームを施すことが自らの使命だと捉え、全力を尽くした。

それからは、
「N様に喜んでもらいたい、おばあちゃんとの想いが詰まった家をよりよい形にしてあげたい。」
洋二郎は、各分野のスペシャリストの手を借りてあらゆる手を尽くした。

そして、洋二郎はリフォーム提案プランを何度も何度も出しては、懸念点が発生するたびに各所へ相談した。
プランを書き続ける事、13プランへとも及び、通常の4~5倍のプラン数となったが、ついにN様の心を動かしたプランは完成した。

傾斜地の利点を生かして、長野市に広がる景色を楽しめるようにし、
ご自宅でも仕事をおこなう事があるN様の生活を想像して、
仕事とプライベートの空間をしっかりと分けられるような今ドキのプランへ。

当初から1番のポイントとしてあげていた耐震性能では、既存の躯体を活かしつつ、補強を施し、1.03の耐震性能へと劇的に向上。また、断熱性では寒い信州でも快適な生活を送れるよう、UA値=0.42w/㎡K、気密性もC値=0.93c㎡/㎡と現代の省エネ性能でも十分な断熱性能を確保した。

そして、迎えたお引渡しは12月25日のクリスマス。
おばあちゃんの家に新たな価値を創出した洋二郎はサンタクロースに見えたに違いない。

新しい息吹が吹き込まれた住宅で、想い出が受け継がれていくことを、1番に喜んでいる、
洋二郎はさぞかし満足だったのではないかと・・・

投票数

6 7

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リノベーション後 After

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

崖に面した部分は減築し、外壁は軽い金属サイディングのカバー工法で新築時のようにリフレッシュ。

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

建物軽量化のため、過去の増築部を減築し、崖に面した壁のモルタルは鉄板サイディングへ。

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

LDK 左の大開口から眼下に絶景が広がる。視線の先に空間が広がっているため数字以上の広さを感じられる。

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

居間と客室をつなげてゆとりあるLDKを計画。陽あたりが良く明るく開放的な空間を実現。

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

2階に設けた奥様のサロンスペース。プライベート空間を通らずにサロンに行けるようお客さま動線を工夫した。

洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

サロンに隣接するバルコニーから眺望が広がる。

リノベーション前 Before

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    築44年の建物は屋根外壁の痛みが進んでいた。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    増改築を繰り返した建物は耐震性に不安があった。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    昔ながらの間取りは使いづらく、プライベート空間とお仕事空間のゾーニングが必要だった。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    水回りの劣化が進んでいた。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    タイル風呂は冬期の底冷えが深刻だった。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    2階からの眺望が素晴らしく、このロケーションを活かしていくためリノベーションを決断。傾斜地という立地で安全に暮らしていくために崖側の荷重を大幅に軽減した。

リノベーション施工中 Process

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    フルスケルトンの状態にし状況を再確認。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    お風呂廻り等、蟻害で腐食している箇所は交換し、補強計画に合わせて金物等で補強を実施。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    断熱材はセルロースファイバーを使用し、専門業者に施工してもらうことで施工精度を確保。断熱ラインより下に天井を組むため、欠損も抑える施工。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    断熱材を施工後の中間気密測定を実施。C値0.93c㎡/㎡を実測。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    大工工事と並行して、室内の美化にも意識して、安全かつ快適な施工を確保。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    養生をしっかりと行い、極力傷を付けないように配慮。仕上の精度にも影響するためしっかりとパテ処理を実施。

間取り Plan

リノベーション前

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    増改築を繰り返した建物は傾斜地側の荷重が大きく、耐震性に不安があった。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    お施主様が不便に感じていることを聞き取り、ご要望をチームで共有して最適なリフォームを提案した。

リノベーション後

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    傾斜地側を減築して建物全体を軽量化。また建物全体に断熱リフォームを施し、新築並みの高気密高断熱の家へ。

  • 洋二郎は考えた おばあちゃんからのギフトを最高の状態にするために出来る事

    断熱リフォームのシミュレーションを行い、光熱費の変化などリフォーム前後の変化を共有した。

物件概要

所在地
長野県長野市
敷地面積
271.96㎡(82.26坪)
延床面積
119.67㎡(36.2坪)
構造
木造在来軸組工法
既存建築年
1978年(築46年)
改修竣工年月
2021年12月
断熱性能
UA値:改修前1.82w/㎡・K ⇒ 改修後0.42w/㎡・K(改修前の4倍に向上)
耐震性能
上部構造評点:改修前0.28 ⇒ 改修後1.03

企業紹介

企業名
株式会社サンプロ

グレードとは

性能向上リノベでは、断熱と耐震のそれぞれの現行基準を3段階に分類し、基準を策定。性能向上リノベーションがされた証として、必要なエビデンス情報を登録し、安心・快適な家であるお墨付きの証として「性能向上登録証」を発行しています。これからの時代に選ばれる、安心・快適な家を可視化します。

断熱

ランク UA値 断熱等級
0.46 6
0.60 5
0.87 4
耐熱の説明

耐震

ランク 上部構造評点 耐震等級
1.5以上 3
1.25~1.5
未満
2
1.0~1.25
未満
1
耐震の説明
  • 建物は、自立循環型モデル住宅(在来工法)を対象に、地域区分は、6・7地域(都心部を中心)に策定しています。
  • UA値(外皮平均熱貫流率)とは住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示します。
  • 上部構造とは壁や柱など家の構造物のこと。上部構造評点とは、震度6強の地震で建物が倒壊しないために必要な力を数値で表した必要耐力(Qr)に対する現状の耐力の割合を表します。
  • 既存木造住宅の上部構造評点1.0、1.25、1.5は、品確法においての耐震等級1、2、3レベルに相当します。