本計画は、老朽化した建物を社会的な負債ではなく、次世代へ引継ぐ資産へと転換する再生モデルとして、築51年の建物を耐震補強し、増築の確認申請による遵法性を確保したプロジェクトである。
最新の総務省の調査によると、全国の空き家率は過去最高となっている。その原因は資金調達と帰属意識の低さが挙げられる。旧耐震基準の建物を改修する場合、竣工当時の法には適合しているが、現行法には不適合な部分に対して是正が求められ、それに伴ない工事費が高額化する。一方で、税制度上の耐用年数を超過した建物に対して、銀行から融資が借りられず、資金調達が困難になっている。また、築古の建物を親から相続した子世代は建物への帰属意識が低いため、そのまま放置する場合が多く、その結果として空き家に繋がっている。
本計画は、この現状を打破し、既存ストック活用促進に貢献することを目指している。その主な特徴と成果は以下の3つである。
①居住継続を前提に新築同等以上の耐震性能を実現
入居者が住んだまま耐震補強工事を実施し、多様な補強方法を駆使して、Is値を0.37から0.62まで向上させ、新築同等以上の耐震性能を実現した。これにより、住環境を維持しつつ安全性を確保した。
②法制度を活用し、改修と資産価値向上を両立
新宿区において、民間建物初の耐震改修促進法の認定を取得し、現行法への不適合部分を維持しながら、増築の確認申請と検査済証の再取得をした。この結果、改修コストを抑制しつつ、築古建物の資産価値を向上させ、長期的な融資が実現した。
③参加型再生によるSDGsと長寿命化の実践
廃棄予定だった既存外壁タイルを、施主、施工者、設計者の3者による塗装ワークショップを実施し、廃材を再活用した。単なる材料循環に留まらず、再生過程への参画を通じて、建物への愛着を深め、自主的な建物の長期保全を促すことで建物の長寿命化を図った。