特別賞

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

持ち家リノベーション・リフォーム

耐震+断熱

2,000〜2,500万円

2023年04月

<ご要望>
 神戸市にある、祖父母が暮らしていた空き家を孫世帯が引き継ぐための改修計画である。建主は子供の誕生で広い面積と、ライフワークである音楽制作活動のためにスタジオや録音室を欲していた。また、現在は別の場所で篭って制作している時間(制作)を改め、家族と過ごす時間(生活)との両立ができる暮らし方を模索していた。

<既存建物の課題と特徴>
改修する空き家は2階建で、DK 6部屋と建主が求める面積は確保できる。但し、DK→Lが分離•個室が画一的な大きさ・収納が各室に分散等、かっちり間仕切られた従来のnLDK型プランでは、建主が望むような制作の場を設けたり、子育てに配慮した見通しがよく開放的な暮らしをするには、面積の割に窮屈な空間であった。
 一方で空間要素に着目すると、家族の成長が刻まれた柱、変色した柱や梁、長押や欄間、味のある照明や鏡など、祖父母や親戚が集っていた頃の雰囲気が感じられる要素が残っており、建主も極力活用したいと考えていた。

<プラン決定のポイントと工夫>
 そこで、天井・壁の面材や、鴨居・長押の部材を「剥がす」ようにして、改修することを考えた。具体的には、天井や壁の面材は、室要求に合わせて剥がすことで、空間を繋いだり、CHに抑揚を与え、かっちりとした空間を抜けのある柔軟な空間にする。また、鴨居・長押の部材を剥がし、空間の境目をより曖昧にしつつ、柱を独立させることで、空間を広く見せる。
 プランは、夫婦の過ごし方を分析し望ましい制作と生活の関係を検討した。夫は日中は仕事で外出、制作活動は夜や休日が多いこと、妻は日中は家事と子育て、夜は映画鑑賞やその時々に合わせて子供とゆっくりすることから、1階は、LDKと収納、家事室をまとめ、家事動線と子育てを完結させ、2階は、制作活動ができるスタジオや録音室、家族や来客者が過ごせるホール・ライブラリー、寝室を設けて、主な制作時間である夜や休日に家族が過ごせる場として設えた。
 そうすることで、家族で一緒の時間を過ごす1階、家族が存在を感じながら各々の時間を過ごす2階と、時間帯に合わせて家族の距離感が保てるようにし、制作と生活が交わるでも離れるでもなく、家の中で自然と並列して存在できるようにした。

<性能・施工内容>
 耐震診断・補強に加え、断熱材敷設・内窓設置・設備配管/給湯器の更新等、フルスケルトンにしてからの性能向上工事を行い、快適で安心に暮らせるように配慮した。
 また、上述しているようなプランニングにて家族が同一階にいる時間を増やすことで、空調効率の向上に努めた。

<施主様ご感想>
子供の頃から通っていた祖父母の家が、当時の雰囲気を残しながら、自分のライフスタイルに合うように更新された。また断熱性や防音性・耐震性も向上し、性能的にも過ごしやすくなった。

投票数

25 26

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リノベーション後 After

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【1階リビング】
奥のDKと繋げて、LDKを一体的に活用できるようにした。

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【2階スタジオ•ホール】
LDKに加え、家族が各々の時間を過ごせる場所を設えた。

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【2階ワークスペース】
廊下を拡張し、ワークスペースとして活用。南側の採光を床に反射させて奥まで取り込む。

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【2階スタジオ】
隠れていた丸太梁を化粧として活用。天井高に抑揚をつける。

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【1階トイレ前手洗い】
現代的なライフスタイルに合わせて、来客用も兼ねた手洗いを新設。

神戸の改修-制作と生活が並列する家-

【玄関まわり】
断熱材を充填した玄関扉に変更。

リノベーション前 Before

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【1階リビング】
    和室の要素が強く、現代的なリビングとして活用が難しかった。

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    【2階和室1】
    採光通風に優れ、寝室として活用するため、フローリング敷に変更されていた。

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    【2階廊下】
    南側窓まで見通しがよいが、幅が狭く通行のみで活用頻度が低かった。

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    【2階和室1】
    フローリング敷に変更されながらも、特徴的な欄間は残してあった。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【小屋裏】
    断熱材はなく、気密性が乏しい状況であった。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【外観】
    既存ブロック塀や植栽が採光通風を妨げていた。

リノベーション施工中 Process

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【2階天井解体】
    大きな丸太梁があったため、表しとすることにした。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【2階壁解体】
    既存柱を一切撤去しない方針とし、改修プランでは部分的に表しとした。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【耐震補強】
    耐震診断を行い、金物・新規筋交・新規柱梁にて改修プランに合わせた耐震補強を行った。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【断熱材敷設】
    外周部及び天井部に断熱材を敷設し、断熱性能を大幅に向上させた。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【外壁・庇・樋塗装】
    外周部は塗装による補修とし、防水性を高めた。

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    【既存ブロック塀撤去】
    クラックが入っていた既存ブロック塀を撤去した。

間取り Plan

リノベーション前

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    DK→Lが分離•個室が画一的な大きさ・収納が各室に分散等、かっちり間仕切られた従来のnLDK型プラン

リノベーション後

  • 神戸の改修-制作と生活が並列する家-

    1階は、LDKと収納、家事室をまとめ、家事動線と子育てを完結させ、2階は、制作活動ができるスタジオや録音室、家族や来客者が過ごせるホール・ライブラリー、寝室を設けて、主な制作時間である夜や休日に家族が過ごせる場として設えた。

物件概要

所在地
兵庫県神戸市
敷地面積
135.73㎡(41.06坪)
延床面積
121.41㎡(37.03坪)
構造
木造在来2階建
既存建築年
1978年(築46年)
改修竣工年月
2023年04月
省エネ基準地域区分
6地域
断熱性能
UA値:改修前3.54w/㎡・K ⇒ 改修後0.75w/㎡・K(改修前の4.72倍に向上)
耐震性能
上部構造評点:改修前0.31 ⇒ 改修後1.05

企業紹介

企業名
谷口弘和設計室|HTA
Webサイト
https://youtu.be/P-m_hQ8aGFw
コメント

敷地とプログラムを読み解き、あたかも元からそこにあったかのような「しっくりくる」建築を目指します。

上記WEBサイトURLより、ルームツアー動画配信中。

グレードとは

性能向上リノベでは、断熱と耐震のそれぞれの現行基準を3段階に分類し、基準を策定。性能向上リノベーションがされた証として、必要なエビデンス情報を登録し、安心・快適な家であるお墨付きの証として「性能向上登録証」を発行しています。これからの時代に選ばれる、安心・快適な家を可視化します。

断熱

ランク UA値 断熱等級
0.46 6
0.60 5
0.87 4
耐熱の説明

耐震

ランク 上部構造評点 耐震等級
1.5以上 3
1.25~1.5
未満
2
1.0~1.25
未満
1
耐震の説明
  • 建物は、自立循環型モデル住宅(在来工法)を対象に、地域区分は、6・7地域(都心部を中心)に策定しています。
  • UA値(外皮平均熱貫流率)とは住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示します。
  • 上部構造とは壁や柱など家の構造物のこと。上部構造評点とは、震度6強の地震で建物が倒壊しないために必要な力を数値で表した必要耐力(Qr)に対する現状の耐力の割合を表します。
  • 既存木造住宅の上部構造評点1.0、1.25、1.5は、品確法においての耐震等級1、2、3レベルに相当します。