特別賞

谷地ひな市通り 雛の館の決断

持ち家リノベーション・リフォーム

ゾーン断熱

4,900万円

2022年12月

  • ゾーン断熱

【改修方針・施主様ご要望】
 その家が建てられたのは、ペリー来航から3年後の安政三年。西暦でいえば1856年のこと。
 築166年にもなる古民家の改修は、当社としては初めての経験。地元のひな祭りで享保雛を毎年一般公開する由緒正しい家とあってはプレッシャーもひとしお。
「玄関入ってすぐ、小屋組み・野地板あらわしの空間はそのままが良い。銅板葺きの屋根も部分張り替えのみで。当時の貴重な細工が多く残る和室もそのままにしてほしい。」などの施主様ご要望により、フルスケルトンによる「まるごと断熱」ではなく「ゾーン断熱」による改修を選択。
 昔のつくりをそのまま残したいという箇所も多く、断熱・気密ラインは完璧には確保できないものの、「やれるだけのことはやる」という方針で、断熱改修を含むリノベーションにあたりました。

【性能・施工内容】
 外壁まわりは内外ともにすべて大壁に改修してグラスウール120mmを充填。
 屋内の非断熱空間と接する新設間仕切壁にもグラスウール105mmを充填。
 床断熱は大引間・根太間に合計140mmのグラスウール充填。
 天井断熱はグラスウールブローイング300m。
 外部との境界となる箇所には室内側に防湿気密シートの施工もおこないました。

【施主様ご感想】
 約50年前、先代が構想し断念したリノベーション工事が、半世紀の時を経てようやく叶いました。
 改修前は無断熱ですので、真冬の朝には家の中でもコップの水が凍っていることもよくありましたが、改修後は非常に暖かく過ごせています。
 少し暖房をつけただけで充分に暖かくなりますし、夜に暖房を消しても翌朝寒くありません。
 昔の面影を残したい箇所が多く、まるごと完璧な断熱・気密工事とはいきませんでしたが、それでも充分な暖かさが得られ、改修を決断して本当に良かったと思います。

【事業者所感】
 屋内の非断熱空間とは通常の室内建具1枚で仕切られている箇所が多く、UA値としてはどうしても厳しい評価。完璧な断熱改修とはいきませんでしたが、とはいえそれでも充分な効果の出せた改修工事となりました。

 築166年の古民家でも、ゾーン断熱でやれるだけのことをやれば現代的な暖かい暮らしは可能であることが実証できました。
「古民家」でのご家族の暮らしは、これからも続いていきます。
 今回の改修工事を通して、「これからを暮らす」ための「新しいスタンダードをつくる」ことに、いくらか寄与できたのではないでしょうか。

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リノベーション後 After

谷地ひな市通り 雛の館の決断

銅板葺きの屋根は部分改修のみ。外壁は無塗装の杉板張り。今後の経年変化も楽しみ。

谷地ひな市通り 雛の館の決断

家族用玄関。すっきり上品な印象に仕上げた。まるで旅館みたいとご家族から高評価。

谷地ひな市通り 雛の館の決断

三和土からDK側を見る。三和土・ホール部分は天井断熱・屋根断熱ができないため半分屋外。正面に見える煤のついた壁はご要望によりそのまま残した。

谷地ひな市通り 雛の館の決断

DK。製作建具はガラス入り格子戸と、ガラスなしで通風可能な縦格子戸の二重構造。夏場のエアコン冷房が大の苦手という奥様に配慮し、古民家ならではの「通風で涼を取る」考えをあえて残した。

谷地ひな市通り 雛の館の決断

リビングから庭園を見る。昔の広縁部分を一体化し、広々としたリビングに改修した。漆喰のように見える白い壁はAEP塗装仕上げとし、これからのメンテナンス性を重視した。

谷地ひな市通り 雛の館の決断

建物北東側より。窓サッシはすべて入れ替え、廊下には床断熱も施した。ご要望により天井断熱は施工せず、既存の野地板あらわしのままとした。それでも改修後は床板や戸からのすきま風がなくなり、大変喜ばれた。

リノベーション前 Before

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    外観写真。

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    安政三年の建築を示す棟木銘(棟札)。

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    家族用玄関。

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    土間から洋室(1)側を見た様子。

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    洋室(1)から台所を見た様子。

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    建物北東側より廊下を見た様子。障子の奥には和室。

リノベーション施工中 Process

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    洋室(1)から台所を見た様子。

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    台所から洋室(1)を見た様子。

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    入れ替えした窓サッシ。

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    大引間・根太間、合計140mmの床断熱。

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    DK。ふだん誰もいない部屋もあるため、割り切って居室と居室の間の間仕切りにもあえて断熱施工。各室冷暖房とした。

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    三和土・ホールに面した洋室(1)と外壁。外壁まわりはグラスウール充填のうえ防湿気密シート張り。居室と非断熱空間との間にもグラスウール充填。各室冷暖房の効率を上げる。

間取り Plan

リノベーション前

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    古民家らしい田の字の間取りを時代に合わせて少し洋風に改修されていましたが、どうしても継ぎはぎ感のある状況でした。

リノベーション後

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    東側の和室はそのまま残しつつ、今どきのリビングやDK空間を生み出していきました。
    小屋組み・野地板あらわしの広い土間空間は残したうえで、ゾーン断熱を施して各室ごとに断熱区画を形成しました。

  • 谷地ひな市通り 雛の館の決断

    壁充填断熱・窓サッシ交換、天井断熱、床断熱の範囲がまちまちとなっています。
    断熱・気密ラインを確保することはできませんが、ご希望に沿いつつやれるだけの断熱工事をしている形です。

物件概要

所在地
山形県西村山郡河北町
敷地面積
2527.41㎡(764.54坪)
延床面積
252.68㎡(76.43坪)
構造
木造在来平屋
既存建築年
1856年(築168年)
改修竣工年月
2022年12月
省エネ基準地域区分
3地域
断熱性能
UA値:改修後0.66w/㎡・K

企業紹介

企業名
白田工務店
Webサイト
https://shiratakomuten.com/
コメント

拠点は山形県朝日町。昭和52年創業。
村山地域を中心に、新築住宅の設計・施工、リフォーム&リノベーション工事等をおこなう、地域に根差した工務店です。

グレードとは

性能向上リノベでは、断熱と耐震のそれぞれの現行基準を3段階に分類し、基準を策定。性能向上リノベーションがされた証として、必要なエビデンス情報を登録し、安心・快適な家であるお墨付きの証として「性能向上登録証」を発行しています。これからの時代に選ばれる、安心・快適な家を可視化します。

断熱

ランク UA値 断熱等級
0.46 6
0.60 5
0.87 4
耐熱の説明

耐震

ランク 上部構造評点 耐震等級
1.5以上 3
1.25~1.5
未満
2
1.0~1.25
未満
1
耐震の説明
  • 建物は、自立循環型モデル住宅(在来工法)を対象に、地域区分は、6・7地域(都心部を中心)に策定しています。
  • UA値(外皮平均熱貫流率)とは住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示します。
  • 上部構造とは壁や柱など家の構造物のこと。上部構造評点とは、震度6強の地震で建物が倒壊しないために必要な力を数値で表した必要耐力(Qr)に対する現状の耐力の割合を表します。
  • 既存木造住宅の上部構造評点1.0、1.25、1.5は、品確法においての耐震等級1、2、3レベルに相当します。