選考委員賞

TSUNAGU三重の家

モデルハウス・体感施設

耐震+断熱

2,800万円

2023年08月

  • 断熱

    等級6

  • 耐震

    上部構造評点1.78

〈Before〉

増え続ける空き家や資材高騰などの社会問題を抱える今。住宅性能表示制度が見直されることを機に、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、リノベーション事業での取り組みを再考しました。
今までは既存住宅ストックや空き家だった実家など、予算内でデザイン性重視のリノベーションをして心が喜ぶ暮らし方を求める施主様が多く、耐震や断熱の優先度は二の次になりがちでした。

耐震性能や断熱性能を向上させるべく、性能向上リノベの会に加盟し、社内チームを立ち上げることに。
ちょうど弊社近くの施主様邸だった住宅が売却されることを知り、性能向上リノベーションを検証するためのモデルハウスとして買い取って、実証プロジェクトが始まりました。

昭和60年に建てられた既存の2階建て住宅は、壁は土壁、床と天井が無断熱でした。当初の計画では充填断熱を予定していましたが、この建物では気密性を確保することが難しく、吹付断熱に切り替えることで気密性能を上げました。
鉄筋コンクリートの布基礎や柱の一部を活用して、耐力面材や耐震フレームⅡなどで耐震補強を施しました。


〈After〉

「人と絆ぐ」、「社会と繋ぐ」、「時代を継なぐ」の3つの「TSUNAGU」を大切にしていきたいという想いで『TSUNAGU 三重の家』と名付けました。
既存は二世帯住宅で広すぎる9LDKの間取りでしたが、動線や熱効率の観点から減築した分、ゆるやかな曲線が奥へ誘う小庭を造りました。ウチとソト、ウエとシタの曖昧な領域は、ほど良く繋がり、気配を感じさせます。
パッシブの観点から、津市の気候風土を考慮した窓の取り方や形状、ガラスを使い分けました。

SDGsの取り組みとしては、既存建物の瓦を外構塀に沖縄の花ブロックを模して再利用することで、日射と目線を遮り通風を確保。一部アップサイクル資材を採用することで、無機質になりすぎない温かみを加えました。天井と壁には、車のクッション材を再利用した樹脂リサイクル壁紙を広範囲に貼りました。トイレの一部に、もみ殻を使用した壁紙を。キッチン壁面には、リサイクル内装ボードがアクセントに。外壁の一部に鎧張りしたリサイクルセメント素材の陰影や、年月を重ねるにつれ変化する風合いを楽しめます。

この実証プロジェクトの一環として、志を同じくする他社様と意見交換や見学などが刺激になりました。完成後は、新たなリノベーションのスタンダードである耐震・断熱を体感できるコミュニティスペースとして、地域への発信拠点にする予定です。特に子供たちへ向けて、衣・食と同等に家や暮らしの大切さを考える「住育」ワークショップの実施、地元の方が利用できる可変レンタルスペースを計画中。
性能向上リノベーションが未来に住み継ぐ住まいのスタンダードになるよう、地域への啓発活動を行っていきます。


〈性能〉
省エネ性能【外皮性能】Ua値:0.43(等級6)【冷房期の平均日射熱取得率】ηAC値:1.3(等級7)

投票数

330 331

投票受付終了

リノベーション後 After

TSUNAGU三重の家

窓から繋がるダイニングキッチンと庭。ワイドスライディングから見える景色が額縁になり、ウチとソトの曖昧な領域を生み出します。ウッドデッキに腰かけて、自然を感じながらチルする時間を満喫できます。

TSUNAGU三重の家

開放的な吹き抜けの玄関は、洗面スペースを備え、多目的スペースとして使えます。
断熱玄関ドアは、顔認識キー搭載のヴェナートD30を採用。お客様にスマートドアを体感していただけます。

TSUNAGU三重の家

LDKの耐震フレームⅡは耐震性能を高めつつ、素材選びや職人技を集めて制作した天井のルーバー装飾とも美しく調和します。
壁面のリサイクル内装ボードがアクセントに。セメント素材独特とコーヒー豆かすの色合いが、独特の温かみを感じさせます。

TSUNAGU三重の家

窓からの明るい光が差し込むLDK内に、天然木の味わいをプラス。突き板フローリングはアカシアで、つやつやとした触感と模様がユニーク。
イギリスのアンティーク家具を修理して生まれ変わった家具や革製品の破片を加工したラグにも似合います。

TSUNAGU三重の家

足元フロート風キッチンから、庭を見ながら作業するイメージを体感できます。いずれは、地元の方が利用できるお料理教室、レンタルキッチンなども計画中です。

TSUNAGU三重の家

2階は、窓外を眺められるワークスペース、ミニキッチン、トイレがあります。セカンドリビングと洋室は間仕切りせず、可変レンタルスペースとして自由に使えるようにしました。

リノベーション前 Before

  • TSUNAGU三重の家

    道路に面した場所にあり、駐車場は軽自動車2台分しか停められません。車が主な交通手段である三重県での暮らしを考えると、駐車場は狭く家は広すぎました。

  • TSUNAGU三重の家

    南面には仏間のある和室から縁側が見え、襖を開けると明るい光が入りました。この縁側の雰囲気や採光を活かしたいところ。

  • TSUNAGU三重の家

    家の中心にあった薄暗いダイニングキッチン。南面は玄関と階段に遮られ、一切光が届きません。東西も部屋に囲まれているため、北面キッチン前の窓と勝手口が唯一の明かり取りでした。

  • TSUNAGU三重の家

    玄関横にある変形した6.9帖の応接室。道路側に面した出窓があり明るいものの、夏の日射や騒音が気になります。

  • TSUNAGU三重の家

    洗面脱衣室を通らないと、トイレへ行けないのは不便。カラフルな浴室は、タイル貼りが賑やかで明るい気分になれる反面、ひんやりと寒く、現代の暮らしには合いません。

  • TSUNAGU三重の家

    2階の続き間の和室。南面には、こぢんまりとしたバルコニーがありました。廊下を挟んだ向かいには2部屋の洋室があり、2階はおそらく子世帯が暮らしたと思われます。

リノベーション施工中 Process

  • TSUNAGU三重の家

    鉄筋コンクリートの布基礎があらわになった解体後の内部。

  • TSUNAGU三重の家

    減築部の瓦を剥がし、外構塀として再利用。瓦はガルバニウム鋼板に葺き替え、屋根の軽量化を図りました。

  • TSUNAGU三重の家

    南面X方向の開口部壁内に設けることが多い耐震フレームⅡは、今回はあえて現しに。Y方向の耐力壁に含めつつ意匠的に見せることで、耐震性と意匠性を両立しました。LDK内の2箇所に設置しました。

  • TSUNAGU三重の家

    外周面に耐力面材、内部は既存の柱や梁を補う形で筋交いを施工しました。床にはボード状の断熱材と気密テープで気密性を確保。

  • TSUNAGU三重の家

    天井と壁に吹付断熱を施工した後の玄関ホール。この状態での見学会を開催し、地域の方へ今の断熱を知っていただきました。

  • TSUNAGU三重の家

    石膏ボードを施工する前に、気密測定を行いました。気密性能にも重点的に取り組んだことで、C値0.4という結果に。この建物はハガキサイズ半分程度の隙間に抑えることができました。

間取り Plan

リノベーション前

  • TSUNAGU三重の家

    二世帯住宅で、敷地内にできるだけ建物を広く、部屋数を取れるよう間仕切りされた9LDKの間取り。
    玄関横にある駐車場は、軽自動車2台分しか停められず、庭も全く取れませんでした。
    勝手口側には、屋根のある納戸があり、ゴミの一時置き場や洗濯干し場として使われていたようでした。

リノベーション後

  • TSUNAGU三重の家

    耐震や断熱性能を体感できるモデルハウスとして活用すること、相談の多い一世帯での暮らしを想定。
    動線や熱効率の観点から減築して、ゆるやかな曲線が奥へ誘う小庭を造りました。
    吹抜けの玄関ホールには洗面スペースを設け、2階と繋がる階段へのアクセスもスムーズ。
    LDKを中心に回遊できる間取りで、ダイニングキッチンとリビング間は、フレームⅡでやんわりとゾーニング。
    ダイニングキッチンからウッドデッキの延長線上にある庭を眺められ、暮らしのウェルビーイングを感覚的に提案します。
    北面に水廻りを集約した家事動線、駐車場近くのSICと隣接したプライベート用玄関の使い方など、暮らし方をイメージしやすくしました。

物件概要

所在地
三重県津市
敷地面積
164.74㎡(49.73坪)
延床面積
128.79㎡(38.88坪)
構造
在来軸組工法
既存建築年
1985年(築39年)
改修竣工年月
2023年08月
省エネ基準地域区分
6地域
断熱性能
UA値:改修前3.56w/㎡・K ⇒ 改修後0.43w/㎡・K(改修前の8.3倍に向上)
耐震性能
上部構造評点:改修前0.33 ⇒ 改修後1.78

企業紹介

企業名
株式会社アルフレッシュ
Webサイト
https://alfresh-mie.net/
コメント

アルフレッシュでは、中古住宅探しからプランニング、リノベーションまでワンストップで対応いたします。
私たちが大切にしているのは、住む人を第一に考えたリノベーションをご提供すること。そして、目に見えるデザイン性だけではなく、断熱や耐震などの機能性も一緒に考えること。これからを暮らす家の新しいスタンダードをご提案いたします。

グレードとは

性能向上リノベでは、断熱と耐震のそれぞれの現行基準を3段階に分類し、基準を策定。性能向上リノベーションがされた証として、必要なエビデンス情報を登録し、安心・快適な家であるお墨付きの証として「性能向上登録証」を発行しています。これからの時代に選ばれる、安心・快適な家を可視化します。

断熱

ランク UA値 断熱等級
0.46 6
0.60 5
0.87 4
耐熱の説明

耐震

ランク 上部構造評点 耐震等級
1.5以上 3
1.25~1.5
未満
2
1.0~1.25
未満
1
耐震の説明
  • 建物は、自立循環型モデル住宅(在来工法)を対象に、地域区分は、6・7地域(都心部を中心)に策定しています。
  • UA値(外皮平均熱貫流率)とは住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネルギー性能が高いことを示します。
  • 上部構造とは壁や柱など家の構造物のこと。上部構造評点とは、震度6強の地震で建物が倒壊しないために必要な力を数値で表した必要耐力(Qr)に対する現状の耐力の割合を表します。
  • 既存木造住宅の上部構造評点1.0、1.25、1.5は、品確法においての耐震等級1、2、3レベルに相当します。